世の中には意図せぬことが突然起きる。長いこと生きていればいろんなことに遭遇しいろんな自分でも信じられないような馬鹿なことをしたりもする。
だからこの年齢になると大抵のことには驚かないが今回の一件は少々驚いた。
ことの発端は弁護士事務所からの1通の手紙から始まった。
メルペイにある負債一万円をすぐ返済しないと法的手段に訴える、という内容である。私はメルカリを使っていて不用品を売ったりお金に困ったときには必要なものでも売る、ということはやっていた。
メルカリの発行するカードはメリットも多いのでメルカードも使っていた。
だいぶ前の話である。おそらく二年以上は使っていない。いや、たぶんもっと長いこと使っていないだろう。それははっきり言える。
なぜなら私はたった一枚のカードを除いて使えない立場になっていたからだ。端的に言うと債務整理中なのである。ネットで買い物をしてカードで支払おうと思ってもあれもダメこれもダメで一枚だけ何とか上限を抑えて使えるようにしてもらっている。
そういう人間のところへ「メルカードで使った残高があるからそれを支払え」と言われてもキツネにつままれたような気分で支払えるわけがない。
当然放っておいた。放っておいて済めば何の問題もないけれど弁護士事務所としても一通出しておいて「ハイ終わり」というわけにはいかないのだろう。
翌月二通目が届いた。一通目は黄色い封書だったが二通目は毒々しい赤い封書で届いた。文言はほぼ同じである。
法的措置をとっても構わないけれど、たとえば法廷に立ったとしてまず相手の主張を聞いて(身に覚えのない借金でどのような主張をしてくるのか想像もつかないが)その不自然な主張に対して反論すればいい、と軽く考えていた。
でも考えた。司法機関に呼びだされて立川地裁まで行くのも面倒である。思い切って手紙に書いてある連絡先に電話した。
「先月から全く身に覚えなおない請求をいただいているんですけどこれっていったいどういうことなんですか。」
電話に出た法律事務所の方はとても丁寧に対応してくれた。
「そうですか。全く身に覚えなおない請求なんですね。でも私たちはメルペイさんからいただいたデータで請求しているだけで細かい内容まではわからないんですよ。メルペイさんに照会するしか方法はないですね。」
「そうなんですか。メルペイさんに色々聞くのって本当に大変なんです。何しろなるべく問い合わせが来ないような、面倒くさくなって途中で諦めるような、電話番号もわからないし、なんだか途中で諦めさせるようなシステムですからね。御事務所で分かる範囲で結構なので教えていただけませんか。
「ほんとにお手紙に書いてある通りのことしかわからないんですよ。」
「そうですか。それならもう一つお尋ねしますが私が泣き寝入りして一万円振り込めばこの件は終わるんでしょうか。」
「それもわかりません。今はリボ払いにされている方も多いので来月も有るかもしれません。総額いくらかもわかりません。」
ここで私ははっと気が付いた。
「悪意をもって私を騙しにかかっているならば一万円で済むはずがない。メルカードの限度額が良くわからないが仮に五十万ならば限度額いっぱいの五十万円を騙しに来るはずだ。
債務整理をしている身で五十万円も追加で騙されたらたまったもんじゃない。
「闘うぞ、断固闘う。負けてたまるか。」
俄然闘争心に火が付いた。最近はなるようになれといつも流れに身を任せて流れに棹さすようなことはしてこなかったが今回はとことん闘うと腹を決めた。
裁判でもなんでも行くとこまで行くしか仕方がない。私は何一つ悪いことはしていない。メルカリの利用者としても悪いほうではないと思う。いつも相手から良い評価をもらっている。
コメントを残す